頚椎捻挫、腰椎捻挫、坐骨神経痛

被害者:性別、年齢不明
受傷部位:頚椎捻挫、腰椎捻挫、坐骨神経痛
治療期間:約120日
実通院日数:約80日
事故状況:停車中の原告車両に、被告車両が追突。被告はそのまま逃走。

認定金額
治療費 約 70万円
通院交通費 約 10万円
休業損害 約108万円
傷害慰謝料 約 75万円
事案の概要・裁判所の判断

本件事故は、停車中の原告車両に被告車両が追突してきたものであり、過失割合に争いはない。また、被告が事故後に逃走したことについても争いはない。
争点は、損害額の相当性である。

治療費についてはその期間及び範囲が問題となった。
原告は、本件事故の3年前にも交通事故に遭い、頚椎捻挫の傷害を負っていたため、被告は、本件事故後の治療に、既往症に対するものが含まれると主張した。しかし裁判所は、本件事故後の通院が既往症に対する治療であったと裏付ける証拠はなく、前回の事故の残存症状が見られなかったことを認め、治療費全額について認めるとの判断を下した。

休業損害については、期間が問題となった。
裁判所は、原告がタクシー乗務員であり、その業務には頚部の回旋や腰部に負担がかかるものがあるとして、実際の休業期間について休業の必要性を認めた。

慰謝料については、本件事故後に被告が逃走している等の事情を斟酌し、赤い本別表Ⅱの治療期間4ヶ月よりも約1割の増額を認めた。

コメント

本件は、一般的な追突事故であり、傷害結果も重症とは言えない。
しかし、このような場合ほど、治療の期間や休業の期間に争いが生じることがある。つまり「とっくに良くなっていたのではないか」「すでに働ける状態だったのではないか」などという疑義が生じることがあるのである。
本件では、被害者が主治医へ愁訴をきちんと伝えており、これが適切に記録されていたため、いつの時点でどのような症状があったかを明確に判断することが可能であった。これによって、治療費及び休業損害について、十全な判断がなされたものと思われる。
重症でない場合にも、後の争いを回避するために、診察へ適切な態度で臨むことが重要となることを示す好例である。